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第三印象なのに第一印象で理解する
2012/01/09 21:51

 前置きもなく愛想なしだがいきなり本題に入る。などといちいち注釈をつけなくてよろしい。
 昨日(1月8日)から始まったNHKの新しい大河ドラマ「平清盛」、僕は元々大河ドラマを観る習慣がないということもあり、観なかったのだが今回のシリーズは当ブログでおなじみのあの人がレギュラー出演しており、賢明なる読者諸氏でご覧になった方は少なくないことだろう。
 そして早速掲示板のほうにご報告いただいたのだが、昨日の「平清盛」の放送で、BGMにエマーソン・レイク&パーマー(略称ELP、日本ではよくEL&Pと表記されるがELPが正しい)の"Tarkus"(タルカス)が使われていたそうだ。「タルカス」と言えばプログレ(言うまでもないがプログレッシブ・ロック)のスタンダードナンバーであるからして、ドラマで使われても不思議ではないが、それにしても平清盛に「タルカス」とは唐突な選曲である。もっとも、曲調…といっても組曲だが、とにかく音がなかなかに視覚的に感じられるため、どんなドラマで使用してもそれなりに合いそうな感はあると思った。元々タルカスというのは空想上の動物の名前で、その物語をコンセプトにした音楽だからかもしれない。

 それよりELPである。70年代前半に大活躍した、プログレを代表するバンドだ。僕は意外と、というのも変だがこのELPが好きなのだ。理由はまあいろいろあるが、ビッグネームであることは確かなので、そのへんは一応ひととおり聴いておくのがロックファンの嗜みとされていたのだ、たぶん。余計なお世話だがELOではない。ましてやELTなどとはどうしようもなく違う。
 僕の中では、やはり最小編成、たった3人(ドラムス+ベース+キーボード)で構成されるプログレバンド、というのが大きい。いつも書いているが小編成が好きなのだ。それも、最小編成でものすごく無理をするバンド。それが非常にロック的だという考えがあって、たとえばギターが二人+キーボードが一人とか、「楽してんじゃねーよタコ」と言いたくなってしまう。あえて無理をするその緊張感がロックの音だろう、と。

 ELPの音楽というのは、ひとことでは説明できないが、うーん、時間の関係で説明は省略^^緊張感溢れる攻撃的な音、と言っておこう。カール・パーマーのドラムスの不安定さは大変なものがあり、レコードでもつんのめったり走ったりするのがELPなのだが、それはご愛嬌ということにしておく^^
 実は、というほどでもないが、お正月ということで先日ロック好きの親戚と話していて、たまたまELPの話が出て(本当だ)、「第三印象はヤマトやもんな」「そうそう」「わはは」「誰が聴いてもそうやなあ」「ところがそれがわからん、ちゅうヤツが昔おったわ」みたいな話になった。
 突然何を言い出すかと思われるだろうが、そのELPの代表作(アルバム)"Brain Salad Surgery"(邦題「恐怖の頭脳改革」)に、"Karn Evil 9"(邦題「悪の教典♯9」)という壮大な組曲がある。「第一印象パート1」「第一印象パート2」「第二印象」「第三印象」と分かれていて、その「悪の教典♯9 第三印象」("Karn Evil 9 : 3rd Impression")の中間部(の一部)が、実は「宇宙戦艦ヤマト」のテーマに酷似しているのだ。

 というわけでその「ヤマト」の元ネタを紹介↓

Emerson, Lake & Palmer - Karn Evil 9 (3rd Impression)

 人間とコンピュータの対話、のようなテーマだと思うのでそのあたり古典的でベタな演出がなされているが、その点は時代背景を考慮してご容赦願いたい。
 それよりこの最初の間奏部。キース・エマーソンの弾くモーグ・シンセサイザー。メロディ、リズムともそのまんまではないか。メロディが異なる部分も、リズムと曲想が酷似しており、これは…宮川泰先生、やっちゃいましたか、という第一印象、ではなくて第三印象だ。もっともこれは一部ではかなり有名な話である。そりゃそうだ、「ヤマト」ファンでELPを知っている人は少ないかもしれないが、ELPを知っている人のほとんどが「ヤマト」を聴いたことがあるはずだからだ。ちなみにこの「恐怖の頭脳改革」が1973年作品で、最初の「ヤマト」は1974年の制作だ。それにしても作曲家とは本当にいろいろなところからネタを仕入れるものだ、と感心…してよいのだろうか。

 ついでにその"Karn Evil 9"をフルヴァージョンで紹介↓

Emerson, Lake & Palmer - Karn Evil 9 *Full Song*

 「第一印象パート1」「第一印象パート2」「第二印象」「第三印象」すべて合わせて30分近い超大作だ。この曲のリハーサル映像がYouTubeに上がっているが、これの制作は大変だっただろう。ドラムスがつんのめったりもたったりするが、最小編成で音楽的にやたら高度なことをやっており、これはロックの知識などで到底太刀打ちできるものではないと思う。

 ところでこのELPの中心人物、キース・エマーソン(ピアノ・オルガン・シンセサイザー)だが、彼はELP結成前、ザ・ナイスというバンドに在籍していた。そのナイスとはどんなバンドかというと、これが驚いたことに、最初はP.P.アーノルドという黒人女性シンガーのバックバンドとして結成されているのだ。

 ではそのP.P.アーノルドとは何者かというと、元はアイク&ティナ・ターナーのバックで歌っていた人で、確か…このあたり記憶が曖昧だが、ミック・ジャガーに見出されて、ではなかったか、とにかくUKの誰かに目を付けられて、1960年代後半に英国でソロシンガーとしてデビューした人だ。そしてデビューアルバムのプロデュースがミック・ジャガーだったかな。

 P.P.アーノルドはR&Bシンガーであるからして、もちろんR&Bを歌っているのだが、UKで、60年代後半のR&Bと言えば彼らだろう、ということで初期はなんと、スモール・フェイセズがバッキングを担当して、曲もスティーヴ・マリオットロニー・レインが作っているのだ。それがこれ↓

P. P. Arnold - If You Think You're Groovy 1967

 演奏は、ホーンセクション以外スモール・フェイセズで、バッキングヴォーカルはスティーヴ・マリオット。何という豪華なレコードだろう。
 そしてモッズの歌姫としてスモール・フェイセズと共演↓

Small Faces & P.P Arnold - Tin Soldier (1968)

 パットもさることながら、やはりマリオットが抜群にカッコいい。

 そのP.P.アーノルドに専属のバックバンドをつけようということで結成されたのが、前述したザ・ナイスである。おお、何ということだ、スティーヴ・マリオットとキース・エマーソンが繋がってしまった。どう考えても接点のなさそうな二人だが、そうでもないのだ。ミック・ジャガーがプロデューサーだったりするため、何だかもっとすごいことになっている。その上に実はロッド・スチュワートまで繋がるのだが、彼はマリオット脱退後のスモール・フェイセズに加入している(バンド名をフェイセズと改名)のでこれはまあ、普通といえばそうだろう。

カテゴリ:Long Live Rock

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